「咲桜ちゃん…」


「先生には…白石さんがいるんです。白石さんだって…。お互い、大切なんです。だから…」



あたしは何を言ってるんだろう。



「大切な方を…裏切ったらダメです…。ちゃんと側にいてあげなきゃ…不安にさせたら、いけないじゃないですか」



本音だよ。

でも
あたし自身が苦しいのも本当…。


そんな事
あたしが言ったらダメ。
白石さんが1番悲しむ。



「これ以上、先生達に迷惑掛けちゃうのは…イヤです。だから…出ていきますね」



言っちゃった…。

先生の口から『出ていけ』なんて言われたくないからって…
自分から離れようなんてね…。


でも
これでいいんだ。


いいんだよね…。




すると先生は
重い口を開いた。



「色々と…ごめんな?柚花の事、ちゃんと話さずに…。だがな?俺と柚花は、婚約してないんだ…」


「…え?」



今なんて…?



「いや、正式には"婚約していた"か…。ただそれは、2年前までの話だ。今はもう、婚約どころか付き合ってもいない」


「でも白石さんがッ」


「それはアイツが勝手に言った事だ。俺は同意してない」



どういう事なのか
まだイマイチ話が読めない。



「咲桜ちゃんには、ちゃんと説明しなきゃいけないな」