意識がハッキリしないからか
涙のせいか
視界がボヤける。


オートロックのカードを解除し
倒れる様に玄関へと入った。


だけどまだ
気を失う訳にはいかない。

ここだと
あたしがいる事がバレてしまうかもしれない。


部屋に…行かなきゃ
そこなら遠いから…大丈夫。



あたしは最後の力を振り絞り
自分の部屋へと体を引きずった。





今までの発作は
すぐに意識を失っていたから
苦しいのは少しの間だった。



でも今は違う。


『意識を保たないと襲われる』

『ここに先生はいない。気を失ったら死ぬ』


追い込まれていた。




あたしはなんとか部屋に入れた。

だけど鍵を掛ける気力も体力も
もうない。


電気も付けず
真っ暗な部屋の隅の壁に寄り掛かると、ズルズルと座り込んだ。



ふと目に入ったのは
床に転がった携帯電話。


手を伸ばし
手繰り寄せると
速水先生を思い出した。






先生…
ごめんなさい


せっかく呼んでくれたのに…
いつも守ってくれたのに…

ごめんなさい。




…助けてほしい





携帯を開き先生の番号を探すと
発信ボタンを押した…