「瑠美、黒岩の下の名前知ってる?」


高校へ向かうバスの中、小声で聞いてみる。


瑠美は、きょろきょろして、かっこいい男子を物色中。



「ん~、そういえば、何やろう?黒岩先生って、呼んでたから知らんわ」


「ははは。好きな相手の名前も知らんなんて、私もあかんな~」





好きになったのは、ある日の放課後。


受験にも、学校にも、親にも、何もかもにイライラしてた時やった。





やる気のない私を呼び出した黒岩。


説教されると思ってたら、全然違って。





“お前の気持ちわかる”



な~んて、かっこいいこと言ってくれて。




受験生の辛さを、黒岩はわかってくれてた。



“親も他の先生もみんな同じ気持ちやで”


そう言われて、心の中のモヤモヤが取れた気がしたんよな。




両親とケンカして、家出をした時も・・・・・・


黒岩の言葉が胸に刺さったんよ。



毎日当たり前に食べてる弁当に、お母さんの愛情が詰まってるってこと。



当たり前やと思ってたことが、当たり前じゃないって教えてくれた。





黒岩が、私を変えてくれた。