黒岩は、深呼吸をした。
深く吸った息を吐いた。
その息が私にかかって、めっちゃドキドキした。
「俺な、ほんまはずっと後悔しとってん。萌ちゃんのためって言いながら、全然萌ちゃんのためになってへんのちゃうかなって」
ハンドルに顔を乗せながら話す黒岩。
「緑川先生にも言われてん。受け止めてあげた方が小阪のためじゃないかって。俺もそう思ったこともあるねんけど、やっぱり俺は不器用やから・・・・・・サッカー教える限りは無理やねん」
「うん。わかってる」
「でも・・・・・・萌ちゃんがまだ俺のこと好きってわかって、めっちゃ嬉しい。ほんまに・・・・・・ありがとう」
迷惑じゃなかったんや。
嬉しいと思ってくれたことが嬉しい。
「これからも好きでおるつもりやねんけどいい?黒岩のこと」
「俺も萌ちゃんのこと好きでおるつもりやけどええか?」
私と黒岩は、ぎゅっと抱き合った。
気持ちが通じるって幸せやな。
こんなにも簡単なことやけど、めちゃめちゃ難しくて。
黒岩を遠くに感じてしまってた。
黒岩は黒岩や。

