【短編】10年越しのバレンタイン



「明日奈、チョコ一緒に食べよう」

弘樹さんはそう言うと、先程私が渡したばかりの箱を開け始めた。

「弘…樹さんが言うからそれにしたけど、ホント地味チョコだよ?」

「いーの!はい、あーん」

「えっ?」

弘樹さんに促されるまま、チョコを口の中に放り込まれた。

「うん、美味い」

弘樹さんもチョコをほおばる。
甘ったるい匂いが辺りを漂った。


「明日奈」

不意に、弘樹さんが箱を私達の間に置くと、引き寄せるようにして私を抱きしめた。

「ひっ弘樹さん!?」


ドキドキするのと、甘い匂いで酔いそうなのとで、私はクラクラしていた。

「きちんと言っておく。明日奈が……好きだからな」


「うん、私も……弘樹さん」





 10年あなたを想い続けたあの日々は、あなたが受け入れてくれて一方通行じゃなくなった。

あなたは私の事を真剣に考え、道を開いて待っていてくれた。


ありがとう。
あなたに会えて、本当に良かったと思う。



優しく重ねられた唇が、お互いの温かさを伝えていた。