「咲……」
「うじうじするなっ、別れられなくなる!」
「咲は寂しくないのですか?俺はとても寂しいです……」
「いやまあ、寂しいって」
正直、ちょっとしかわいてこない。
何せ、会ってから――私が目覚めてからこいつといる時間は短い。
そうそう寂しいなんて感情生まれるわけはないのに。
「咲、また呼び出してくれますよね」
土砂降りに捨てていく犬を思い出す。
後味悪すぎんだろ。
「あー、もう。寂しいよ、そりゃあ。また拾って……違った、すぐに呼び出すからそんな顔するな。笑顔が一番。うじうじ顔は勘弁してくれ」
「はい!」
花よりも美しい笑顔を見た瞬間、インキュバスの後方に黒い淵が現れた。
冷たい風が一気に流れてくる。


