「はい、命令してください。俺はあなたのために生きているんですから」
「とりあえず、ツンデレになって。萌えたいから」
「分かりました」
分かるんかいっ、のツッコミをよそに、インキュバスはちらちらと辺りを見回した。
やがて、Aが買ってきた肉まんを手に取る。
包みをあけて、あーんとしようとしたとこで――奴と目が合った。
なんか二枚目の目をして、肉まん、私と見比べ。
「ほら」
肉まんを差し出された。
「は?」
「ほらって言ってんだろ」
無理やり押しつけられた肉まん。インキュバスは私の顔を見ずにむっとしている。
「か、勘違いすんなよ。俺は腹減ってないからな、お前にくれてやる」
台詞のあと、インキュバスの腹が微かにぐうの音を出した。


