「はい体温計」

「あと氷枕」


同時に差し出されたそれらをゆっくり受け取った。

『……』



何も言ってないのにそういうのを渡してくるあたりが、鋭い。

ふと視線を窓に向けると、もう日が沈んでいた。

暗くなり始めている街には、少しずつ街灯が灯る。


だいぶ、時間が経ってたんだな。



急に、ピピピ、と体温計がなった。


「はい回収」

『おい、砂希、』

「病人に文句は言わせません」

『別に病人なんかじゃねえよ』


砂希にとられた体温計は、俺を病人と言った梨沙へ回った。

しばらく無言だった二人は同時に口を開いて、

「「寝なさい病人」」

そう言った。


その台詞と共にベッドに体温計を放り投げる梨沙。

砂希は退かしてあった毛布を俺に適当にかぶせた。


「寝てなよ。飲み物持ってくるから」

「みかんゼリー買ってきてあげるー」


砂希と梨沙は、それぞれ動き出した。


「砂希ーコンビニ行ってくるー」

「ちょっと待って。ついでにチョコ買ってきて」

「切れた?ならまた補充しなきゃ」

「あとお風呂上がりに食べるアイス」

「「チョコ味のね!!」」


ハイタッチをしながら盛り上がる双子。



なんか、やっぱり懐かしい。


『…………おかえり』


小さく、聞こえないようにつぶやいた。



何でこんなに繰り返し言うのか、俺に毛布をもわからない。



でも、何故か、今。

唐突に。




そしたら、急に二人は俺の目の前まで戻ってきた。