暫く、ただ、沈黙が流れた。
窓から差し込む、薄い月の明かりは、けれど優しく、二人を包んでいた。

「悩みなさい」

沈黙を破ったのは玲子だった。

「それが人だから」

玲子は少し嬉しそうだった。

「こっちに来て…ううん、もしかして、初めてなんじゃない?そうやって、胸の中にしまっていた気持ちを誰かにぶつけたのは」

その言葉に、小太郎は目を見開いた。


俺は、今…


玲子の言う通りだった。
忍である以上、自分というものは常に殺さなくてはならない。

だが、それが当たり前すぎて。
それが当然なのだと思っていた。