毎日を玲子と過ごす。
それが当たり前で、安らぎでもあった。

「もうこっちに来てから一年が経つし。私以外の人と、関わりを作るのも大切よ?」

玲子はいつも言う。
自分のことは気にしなくていい。恩など感じる必要もない。
ただ、人として、思うままに生きろ、と。

だが、生まれた時から忍として育てられ、忍としての生き方しか知らぬ俺には、人としての生活というものは、存外難しいものだった。

「考えておく」

俺がいつものように答えると、玲子は苦笑した。

「うん。ま、こういうのは無理にこっちからしなさいって言うものでもないし。小太郎もわかってるか。ごめんね?同じこと、何度も言って」

玲子の言葉に、俺はこちらこそ、と、首を横に振った。