「あの…」

その場を去ろうとするコタロウに、思わず声をかける深幸。
コタロウは何も言わず、足を止めた。

「ありがとうございました」

コタロウに助けるつもりはなく、ただ、呼びにきただけだとはわかっていたのだが、なんとなく、声をかけたいと思う気持ちもあって、頭をさげて深幸はお礼を言った。

「いや…」

少しだけ、戸惑うような表情を浮かべるコタロウに、深幸はクスッと笑った。