前に、幸姫と喋ったことを思い出した。

「そう言えば、旅がしたい、と、幸姫に答えたことがある」

小太郎は箸を止めて続けた。

「彼女が言ったんだ。争いのない、平和な時がきたら、何がしたいか、と」

今でも覚えている。
笑って、彼女が言ったことを。

「諸国漫遊、世直しの旅、と」

玲子はそれを聞いて、微笑んだ。

「そっか。あの子、そんなこと言ってたんだ」

言って、また、小太郎を見た。

「世直しの旅じゃないけど、今度少し遠くに出かけてみよっか」

玲子が言うと、小太郎は小さく微笑みながら、頷いた。