「おいで」 こんな時は優位に立てる。 体育館裏に生えている木々の影は誰かに見られるという心配はない。 「なにかしてほしい事は?」 「……ん、背中。 背中……貸して」 後ろから漏れる泣き声は、いつ聞いても嫌だ。 暫くして泣き終わった千湖は、 「ごめ゛、鼻水づいだ」 明日は土曜日だし、クリーニングに出そう。 「……大丈夫。 僕は部活に行く。 千湖はまだ来るな」 「ん、」 泣いた後だとわかる顔して部活に行かせたくない。 むさい男バスだと色々とあるのだ。 色々と。