ちいさなたからもの

「小さかった弟は、悲しんだ。



少し経つと、今まで優しかった少女が、冷たくなった。



ただでさえ、高校受験が近くてピリピリしていたときだ。



少女の悲しみは、誰よりも深かったのだろう。



辛そうな顔をしていた。



男の子は、少女がそんな顔をしているのが悲しかった。



辛かった。



そして・・・寂しかった。



弟には、父親がそばにいてくれた。



でも、いつも家族4人でいたのに、急にふたりになったんだ。



それは寂しいことだった。



母親が事故にあって、ひと月が過ぎたころだ。



弟の寂しさは、限界に達した。



少女に、笑顔でいて欲しかった。



もう一度、優しくして欲しかった」