「あのさっ、」

あたしは、
小さい頃から欲しいものは言えばくれた。
親とか、
親戚とか、
とにかく愛はなかったけど

どちらかといえば恵まれていた。


今は、
健也くんが欲しい・・・。

だけど、
お金では買えない。

誰も与えてくれない。


だから言わなきゃいけないんだ。



「夏梅どーした?」

「えっ?!あっ・・・」

 

言葉を詰まらすあたしに
健也くんは不思議な目でみている。



「ライブ頑張って!」

「おぅ」


言えなっ!!
あれ?
こんな言いづらいものだったっけ??
あたふた考えていると、
白いTシャツを着た男の人が近づいてきて
あたしたちの目の前にたった。


「speakさん、スタンバイお願いします」

「あっ、はい」

「2人呼ばなくていいのかな?」

「う~ん、有間と川口の仲を邪魔しない方がいいと思う」

「そうだね。あっ!あの人有間くんのお兄さん?」




夏梅の言う方を見ると、
ワイシャツを第2まであけて
ネクタイをゆるゆるにつけて
シャツをだし
だらない人が、
鋭い目つきでこっちをみていた。

・・・・間違いない。

有間の兄貴だ。



「じゃぁ、俺達スタンバイだから行くわ」


そういう
健也くんの顔はすごい生き生きしてた。
本気でライブが好きなんだな・・・。