先生の家の最寄り駅まで、電車で15分。
車だと30分ぐらいで行けるはずなのに、今日は大晦日だからか?車は混んでた。


「はぁ~~、道混んでるな。」

「大丈夫よ、先生。まだ時間あるし!」


先生の呟きに、里美が答えると、


「あ~!
 倉木、その先生って言うの、今日はパスな。仕事してる気分になる。」


先生はハンドルから左手を離し、手を振りながら言った。
すると、里美はニヤリと笑って、


「じゃぁ、なんて呼べばいいの?
 ・・・ってか、なんて呼び合ってんの? い・つ・も!」


と、聞き返した。



「・・・。」


先生は、手を振ってた左手を頭へと移動させ、髪をくしゃくしゃにする。
照れた先生もちょっとかわいい。


「ねぇ~、葵はなんていつも呼んでるの?」

「えっ?!」

「なんて呼んでるのよー。 いいじゃん、答えなさいよ!」

「・・・はっ・・」

「はぁ?」

「・・・は・・や・・」

「はや?
 ・・・あぁ!はやちゃん? なんか前に最初の授業で言ってたよね?」


里美は私が最後まで答える前に、答えに気づき、手を叩いて


「あーね! 言ってた!言ってたぁ!!」


後部座席で一人盛り上がってた。

それを優しい視線でみてる沢田くんに、私は気づいた・・・。