「記憶が……戻った……?」


嘘っ……。
じゃあ、足長さんは――……


「今朝、退院した」

「――っ!」


そんなっ……。
嘘だっ……!


ずっと、雨が降ってて――。
会いたくても、会えなくて。


でも今日、やっと晴れて――。
だから、会えると思って、楽しみに…………。


「嘘だ……っ」

じわり、視界がぼやけて、
――ポタ。

涙が溢れた。



「木崎!?」

先輩がびっくりしてる。


記憶が戻るなんて、まだまだ先の事だと思ってた。
まさか、こんなに早く――…



「木崎、ショックなのは分かるよ。一生懸命リハビリ手伝ってたもんな」

先輩の声が遠くに聞こえる。


違う。
そうじゃないの。


私はただ、足長さんの顔を見たいだけ。

会えない時間(とき)も、思い出せるように。


もっといっぱい。

足長さんの姿を目に焼きつけたい……。


ただそれだけなのに――…