こねたぼっくす




何て、言ったらいいんだろう。

俺が何かしたんなら謝るべきだ。

でも俺は彼女に何をした?


考えている内に手続きは終わって、俺に返そうと彼女が本の向きを変えた。

ここで俺が受けとれば、もう終わり?

そんなの嫌だ。

でも意気地無しな俺には何も出来ない。

黙って手を伸ばしたそのとき。


「…っごめんなさい」


突然彼女が謝った。


「え……?」

「この間、自分がしたこと思い出して…恥ずかしくって…」


真っ赤になった顔を、本で隠す彼女。

隠しきれていない赤い耳が可愛らしかった。


って、この間って言った?

てことは…俺のこと、覚えててくれたんだ!


「いや、あの…うん」

「…ごめんなさい」


上目遣いで俺を見てくる。

うあ……っ!

眼鏡越しに見える目は潤んでいて、効果絶大だった。