こねたぼっくす




「はい、大丈夫ですよ。ゆっくり仕事してきてください」

「ありがとう、それじゃあ行ってくるわね」


いってらっしゃい、と笑う顔は2週間前と同じだった。

無愛想な女の子も帰って図書室には俺とあの子の2人だけ。

いけないことをしているわけでもないのに、心臓が激しく動いた。

好き……とか?

いやいや、まだ2回しか会ったことないし。

向こうはもう忘れてるかもしれない。


話題になった小説を手にとってカウンターに向かう。

……もし、彼女が俺を覚えていたら。

それが嬉しかったら。

俺は彼女のことが気になってる、ってことなんだろうか。


本を差し出す。

見上げた目と目が合って……

目を、逸らされた。

鈍器で頭を殴られたみたいに衝撃が走った。

……今、明らかに逸らされた?

俺何かしたっけ…?


「…クラスと、名前をどうぞ」

「ぁ…2‐3の、櫻沢 廉、です」

「…ちょっと待ってください」


パソコンを操作して棚からカードを出す彼女。

カタカタとキーボードが鳴る音しかしなかった。