こねたぼっくす








そのまま時間が経って、美華ちゃんは斗真を避けるようになった。

けど斗真も美華ちゃんを追いかける。

斗真の友人として、美華ちゃんの友人として、暴走を止めなければ。


トイレのそばで2人を見つけた。


「斗真ー…あ、美華ちゃん」


思った通り、声を掛けたら斗真に睨まれた。

でもここで退くわけにはいかないんだよなー。

俺と斗真が睨み合ってる内に美華ちゃんは教室に戻っていった。


うんうん、要領よく生きるんだよ。

狼から羊を守る犬の気分だ。

あ、気分っつぅかそのまんまじゃね?


「…で、何だよ」


自分勝手な斗真に、思わずため息が零れた。

ゆっくりと、染み渡るように伝える。

ここで間違えたら斗真はまた暴走する。


気持ちは押し付けるものじゃない。

相手の気持ちや幸せを考えて行動する。

押し付けるだけが愛じゃない。

斗真に諭しながら、こんなものは戯れ事だと自嘲した。

ただ自分の気持ちを伝えられない、臆病者の答えだ。

斗真が落ち着いたみたいだったからいいけど。


手を振って歩きながら、情けなくなった。

俺は美華ちゃんに、自分の気持ちを伝えるのが怖いだけだよ。

誰かに説教する資格なんてない。

いつも1番に美華ちゃんの変化に気付くのに、俺には何も出来ない。

ただ君を、見つめることしか出来ないんだ。