ここまで入って来たか…。恐れを知らぬ愚か者ども。闇に消えるか…。






森がざわめいた。
主は巣に戻る。孤高の玉座へと。






そこにいたはずの獲物はいなかった。






「逃げたか…。」






誰に言うでもなく、呟いた。





儚い琥珀の輝きを探すように。






しかし…。孤高の玉座の下は荒れている。
無数の足跡。






早鐘のように心臓は不規則な鼓動を放つ。






森を駆ける。






見慣れた衣が落ちていた。





ドクン!と心臓は音をたてる。





いつから心など音がするようになった?






闇に心など…ない。





夕暮れが迫る。
森は怒れる獣のように日を吸い込み、闇に溶ける。