―「それにファイターズって歌は確かに上手いけど、でも何か、ただ歌ってるってだけな感じなんですよね」―
―「ホントに実力ある人ってこう…その人の気持ちも伝わってくるような感じするんですよね。ニーナとか。彼女は本物だと思うっ」―
親父以外で始めて指摘された。
俺の歌は完璧じゃないと。
ただ歌ってるだけだって――。
「………ん…」
いつもと違う朝の匂いに気がつき目が覚めた。
久々にぐっすり寝た気がする。
なのに夢に親父が出てくるってどういうことだ。
目覚めはいいが気分は最悪だ。
つーか…。
部屋を見渡す。
隣で寝てるはずの菘の姿がない。
荷物はあるから部屋を出て行った可能性は低いが…。
何しだすか予想不可能な女だからな。
早いとこ――。
ん?