『ちょ、わっ…!!』
ぽすんっ
「お?なんだ、春姫じゃねぇか」
よろめいたあたしを抱き留めてくれたのは、言わずもがな蕪城先生だった。
思わず胸が、きゅんっと鳴る。
『(や、やばい…!眼鏡がないと至近距離で見れない…!)』
今までどこか教師と生徒という隔たりを生んでいた眼鏡がなくなるのは、想像以上に大きな効果があった。
それを身を以て体験してしまい、なんだかとても複雑な気持ちに駆られる。
「おお、炎王寺は気が利くな」
蕪城先生は口角を少し持ち上げ、あたしの頭をくしゃりと撫でた。
「ふふっ。蕪城先生ったら」
「もっとお褒めになっても良いですわよ、先生」
「見せつけられるこちらの身にもなっていただきたいわ…」
3人は口々にバラバラなことを言うと、揃って手を振ってきた。
えっ?
いや、あたしも今から皆と一緒に授業を受け
「よし、お膳立てされたからな。行くぞ、春姫」
『はいいいっ!?いや、ええっ!?な、ちょ、華苗、繭、絵理子!?なんでそんなニヤニヤしてんのーっ!?』
お嬢様のふりをするどころか、素の表情をさらけ出したままあたしは連行された。
もはやお決まりの場所と化している―――数学教官室に。

