『なにあれ、ありえないよ!!』




なんで前とは比にならないくらいモテちゃってるのっ!?


ぶすっと頬を膨らませているあたしを見て、華苗が困ったように笑った。




「る、春姫ったら…。素直なことは良いことだと思いますけどね」


「嫉妬だなんて可愛らしいことこの上ありませんわ!」




繭の言葉は聞き流し、あたしは頬杖をついたまま一向に人が減らない教壇の付近を睨み付けた。


何人か目が合った人はびくっと肩を跳ねさせて、パタパタと教室から出て行った。


……なんなの…っ


なんなのなんなのなんなのっ!?!?




「蕪城先生が“素”で登校なさったのよ」




カツン。


同じ靴を履いているはずなのに何故か綺麗な音を立てて、あたしたちの前に現れたのは。




『あ、絵理子。おはよー』


「ええ、おはようございます、春姫さん。……って!!だ、だだだだだ誰が名前で呼ぶことを許可したんですの!?」


「胡桃坂さんも今、春姫のことを名前で呼びましたわ」


「ええ、私たちには及ばない“さん付け”ですけどね」




先日の一件の所為なのか、胡桃坂さんに対して華苗と繭は高圧的だ。


……ちょ、ちょっと怖い。




「い、一々あげ足を取らないでくださいませ!」


『はいはい。で、蕪城先生がなんだって?』




早く聞きたくてズイッと迫ると、絵理子は顔を真っ赤にしてずざざっと後退りした。


な、なんて失礼な反応っ…!