コンビニ強盗を睨み付けていたあの強い瞳の色を、まだ鮮明に覚えてる。


まさかあの視線を、自分が向けられることになろうとは。


数学の授業の度に教壇に立ちながら、何度も苦笑していた。




「……一瞬だってほっとけねぇくらい、心配なんだ。………気付いたらもう目で追ってる。…深夜のバイトは絶対辞めろ。いつまた変な虫が寄ってくるか気がかりで死にそうだ」




聞こえていないとわかっているからこそ、言えること。


普段ならとてもじゃないけど、恥ずかしくて言えない。




「……なァ、これだけじゃ不安か?俺なりに最上級の好き、なんだよ。どこがとか、いつからとか、細かいこと言わないと納得できねぇか?」




肯定もしなければ、否定もしない。


柔らかな頬をつねってやりたい衝動に駆られながら、また呟く。




「……………春姫、好きだ。好きなんだよ。俺の中身まで好きになってくれたやつ、今までいなかったんだ……」




前の学校で俺を脅していた生徒が、いつも言っていた。




“美葛さん、わたしの前でもちゃんと偽ってね”




こんな粗暴な口調の俺は“蕪城美葛”に不適当だ。


そう、言いたかったんだろう。


実に馬鹿げている―――これが、これこそが、本当の俺だと言うのに。




「………お前にはわかんねぇ話だろうけど、な」




言いながら、春姫の頬に包むように右手を添えた。