スノー*フェイク 【番外編】



「蕪城先生、おはようございますっ」


「はい、おはようございます」


「先生!本日も誠にお美しいですわ…!」


「ふふ、ありがとうございます。しかし胡桃坂さんの美しさには及びません」


「ああ、先生っ…!」


「胡桃坂さん、しっかり!」




時が巡るのは本当に早い。


一昨年は迎えられた側だった俺が―――今年は2度目の迎える側になっていた。


入学式は先月終わった。


新入生たちは早くも新たな学校生活に馴染んでいるようで、先の胡桃坂のように声を掛けてくる生徒も少なくない。




「(やっぱ髪色、黒のままにしときゃ良かったかな…)」




後の祭りだが。


ふう、と嘆息を吐き、俺が校内で唯一自由でいられる数学教官室を目指す。


あそこは俺しか入れないように、校長が手配してくれた。


実際、教官室なんて名ばかりだ。


“蕪城美葛専用部屋”とでも改名してしまいたい。




……いや、生徒に群がられたら困るのは俺の方だな。