それから一度も、女とは会っていなかった。
別に、恋愛感情を抱いていたわけじゃない。
ただ……
「(…もう少しで良いから近付いてみたかった、なんてな)」
しかし、相手は明らかに年下だった。
贔屓目に見ても、容姿から大学生とは言いがたい。
しかも、化粧の一切をしていなかった。
そんな高校生いるか?と高校教員の俺は無意識の内に眉を顰めた。
あの強盗事件から、2ヶ月あまりが経った。
俺は本日付で新たな高校―――皇鈴学園に赴任することが決まった。
前の学校で不祥事を起こした俺を、一瞬の躊躇いもなく校長は引き取ってくれた。
本当にあの人には、感謝してもしきれないくらいだ。
そして、臨時の就任式―――
「…皆さん、初めまして。蕪城美葛と申します。担当は数学です、どうぞよろしくお願いいたします。」
どこもかしこも女生徒しかいない上に、全員が中学から持ち上がりのエリート集団。
……いや、資料によると外部からも一応入学はできるらしい。
それでも毎年1人でれば珍しい、というレベルらしいが。
俺は伊達の眼鏡を掛け、静かに微笑んだ。
もう前回のような失敗は許されないと、肝に銘じていた。
そして、あっという間に年は経った。

