やっぱ、事情聴取とかあんのかな。
犯人を捕まえてやったんだから、さっさと帰して欲しい。
「(…お、やっと静かになったか)」
俺は眼下で泡を吹いて気絶している男の背中を足で蹴り上げ、ごろんっと床に転がした。
ついでにナイフを拾い上げ、何の気なしにレジ台に置いた。
女はひどく驚いていた。
……おい、俺はそんなに弱そうに見えんのか?
若干傷付きながら溜息を吐くと、女は口元を押さえて俯いた。
「……なぁ。なんであんな無茶したんだ」
「…………その、人質になっていたお客様を助けたくっ…」
声がぷつりと途切れた。
不思議に思い、気付いた時には女の肩を掴み顔を覗き込んでいた。
先月には関わりたくないと思っていたはずなのに、何故か俺は自ら女に近付いていた。
「…っ、あ……!」
女が小さく声を上げた。
か細い、まさに蚊の鳴くような声だった。
「な、お前っ……」
衝撃的な様子に、一瞬心臓が止まったかと思った。
女は、静かに泣いていた。

