『あんたみたいなクズにやる金はないわっ!!!』
ん、なっ…
「(なに言ってやがるこの脳軽女っ…!!)」
んなもん逆上してくれっつってるようなもんじゃねぇか!!
案の定、犯人は人質にしていた中年男性を解放し女に怒鳴り付けた。
「んだとてめぇ!?女がいきがってんじゃねぇよ!!」
俺にはただのおもちゃに見えても、立派なナイフであることには変わりない。
鈍い銀色に輝く切っ先が、女の喉元に向けられた。
ごくり。
……息を呑んだのは、俺の方だった。
「(なんであいつ、あんなに強気なんだよ…)」
先月、ナンパに遭っていた時は身動き1つできないくらいビビってたくせに。
なんで、だよ。
なんで強盗が相手だと、全く物怖じしねぇんだ。
「(…いや、マジで意味わかんねぇ)」
果たして、この華奢な女が空手や柔道の黒帯を持っているだろうか。
果たして、このか弱そうな女が実は暴走族のトップだったりするだろうか。
答えは―――否、だ。

