「近寄るな!」


「キャッ!」



悲鳴と一緒に、美羽はその場に尻餅をついてしまった。



いや、正確には晴太に押されて尻餅をついてしまったのだ。



水は当然こぼれ、コップも床に落ち、割れてしまった。



それを見つめながらただただ呆然とする美羽。



上には、同じように固まって動けない晴太。




美羽は一息吐くと、台所に行き、また新しいコップに水を汲み、今度は晴太にではなくテーブルに置いた。



そして割れたガラスの破片を拾い始めた。




「ここはあたしがやっておきますから、早く水を飲んで寝て下さい」


「美羽・・・俺」


「早く」



晴太が何かを言い掛けたが、美羽が顔をあげ晴太を一瞥すると、何も言えなくなってしまった。





「お休みなさい」


「あぁ、おや・・・」




晴太が最後まで言い終わる前に、美羽はさっさと部屋に戻ってしまった。





そんな美羽を見て、晴太は足元から何かが崩れ落ちる感覚に陥った。



「さっき店で、柊さんに言われたばっかだってのに・・・俺は何てことを・・・・・」




晴太はその場にしゃがみ頭を抱え、しばらくそこから動けなかった。