書斎から出てきた晴太に全く気付かなかった。




「あの、いつ書斎から出てきたんですか?」


「さっき。3分くらい前か」


「そうですか」


「で、お前は今何を考えてたわけ?」


「え」



あなたのことです。


なんて口が裂けても言えない。



「明日の朝ごはんを」



だから、咄嗟に嘘を吐いたが



「明日の朝ごはん担当は俺だが」


「え、あ、そうでしたか」



口を開けば、どんどん焦って余計なことばかり言ってしまう。




美羽が再び、水を出して食器を洗い出すと、美羽の言動に不審に思い、晴太が



「それが終わったら、リビングに来い」



と言って、台所から出ていった。




晴太さんに、心配をかけてるのかもしれない。




そう思えば申し訳ない気持ちが沸くのだが、言うのは気が引けて仕方ない。



でも結局最後には無理にでも言わされるだろう。



それなら、最初から諦めて全て話した方がいさぎいいのかもしれない。




美羽は深呼吸をすると、水で濡れた手をタオルでふき、リビングへ向かった。