「あ、えっと。
私の名前は夏目綾子って言います。」



夏目?



やっぱり聞いた事のない名前だった。



「お前の家は公家か?
それとも何処かの豪族か地侍の家か?」



名のある武家ではないだろ。



聞いた事ないし。



「ち、違う…」



違うのか。



「じゃあ、まさかお前、乱破(らっぱ)か?」



俺がそう聞くと、天狗の女…綾子は急に怒りだした。



「ら、ラッパって…。
あなたねえ!
いくらなんでも私が楽器なわけないでしょ!?
ひどいっ!!」



「お前こそ何言ってんだ。
乱破が楽器だと?」



「ラッパって言えばあの金属で出来た笛みたいな楽器のことじゃない!!」



「金物の笛なんか無いだろ。」



「はぁ!?」



「俺の言ってる乱破ってのはだなあ、素破(すっぱ)とか聞者役ってことだよ!」



「は?
素破って、何?」



「そんなことも知らないのか?」



「…知らない。」



「乱波とか素波って言やあ、諜報とか暗殺とかする奴らのことじゃねえか。」



綾子はしばらく考えて



「あ、もしかして忍者ってこと!?」



と言った。