「ただいま~。」

「おかえり。」

「何だかんだで、お腹メチャクチャすいた~。」

いつもよりこのセリフに気持ちが込もる。

「ご飯食べる前にあんた隣行ってきなさい。」

「ん?なんで?」

「いいから。早く行ってきなさい。」

一体なんだよ。とか思いつつ、俺は隣の家のチャイムを鳴らした。

すると、玄関が開いて中から小さな女の子が飛び出してきた。

「お兄ちゃ~ん。」

「おおっ。」

俺は腰を下ろして、目線の高さを合わした。

「今日、デートの約束してたのに~。遅いよ。」

デートって…。いつも一方的に遊ぶ約束を強制させられていたような気がするが…。
とりあえず、チョコで頭の中がいっぱいだった。

「ごめんなさい。」

「うん。いいよ。明日はデートしてね。」

「いっ…いいよ。明日は必ず遊っ、じゃなくてデートね…。」

こうでも言っておかないと機嫌が悪くなる。

「うん。でね。これっ。」

そういって小さな手には収まりきれていない箱を渡された。可愛い包装紙で包まれていて、リボンまで巻かれてある。



「チョコ。」

「俺にくれるの?」

「うん。作った。」

「まじ!?ありがとう。」

「うん。おいしいよ。」

「そうか…じゃあ、明日一緒に食べよう。」

「うん。約束。」

「寒いし、早く家に戻りなよ。」

うん。と頷いて走って戻っていき玄関の扉を閉める時に手を振ってきた。

俺も手を振り返した。

隣に行けってこういうことか。

チョコには変わりないんだけどな…。
イマイチ、チョコに色気がないと言いますか…。

9割くらい、なんか満たされないものが…あるんだけど…。

そう想いながら、チョコを口の中に…。

「………。」

口の中で次第に溶けて、後からくるこの塩辛さ……。

…塩と砂糖を間違えたんだね……。


いやぁ~よかった。

俺がもし、ナメクジなら縮んで消えてしまうところだったわ~。

なんて、今日だけは前向きに物事をとらえられない。