―と、なるはずだったのに…。真っ暗というか闇だよ…。

さすがに、今渡されたらシルエットぐらいしか分からない。

恥ずかしがり屋さんにも限度がある。

う~ん。もしかして、もう…ないのか?

「お~い。こんなところで一人何してるんだ?」

「まっつん…。」

「もう、学校閉めるから早く帰れよ。」

「…まっつん。今日って何月何日だったけ?」

「…ん?2月14日、バレンタインだけど…。それがどうした?」

「…いえ。ただ…夕日があんまりにも綺麗だったもので…。」

「そうか…今日はずっと曇りだったんだけどな~。」

「……。」

俺は、カラッポの鞄を掴みゆっくり靴箱に向かう。

「真っ暗だし気をつけて帰れよ~。」

そんなに声を出さなくても無駄に聞こえてるよ~。

…終わった…?すべて終わったのか?

今思えば、なんで心当たりがまったくないのに朝からチョコ貰える自信があったんだろう?

なんで、ソワソワしていたんだろう。

弁当を持ってこなかったり断食とか言っちゃったりした自分…。

最後に教師からの辱しめを受けるし…。

…俺としたことがすっかりこのイベントに踊らされてしまったよ。

まったく…恐ろしい日だぜ!バレンタインデーはよ~!

暗闇の中、俺は自転車を力いっぱい漕ぎながら叫ぶしかなかった。