教室に一人佇みながら思う。

放課後というこのシチュエーション。

メインイベントというこの状況は全てが揃っている。

遠くから聞こえる吹奏楽部の音でさえ、放課後という時間を演出している。

しだいに冷えてゆく空気、そして静かな教室に、君の少し緊張した声が染みわたる。

薄暗くなっていてもはっきりと分かる君の顔。

恥ずかしそうに、ゆっくり俺の胸辺りに差し出される小さな袋。

それを両手で受け取ったと同時に君の指先の体温を感じた。

「ありがとう。」

そう言うと君は照れ臭そうに、ニッコリ笑う。

「寒いし、一緒に帰ろうか?」

「…うん。」