夏紀は、共演するようになってからドラマの収録の合間に話すようになったけど、礼儀正しくていい奴だと思う。





でも、和也によるとあんまり関わんないほうがいいらしい。





俺には、あんまりその意味は分かんなかったけど……。





「藍川さん……あの、ちょっとお時間良いですか?」




「あ、えー……と」





できれば早く帰って奈央に会いたいし……。




俺が戸惑っていると





「少しでいいんですっ……。あたし……都会に上京してきてから、相談できる人があんまりいなくって……藍川さんならいつも優しいから、相談にのってくれると思って………」





夏紀は泣きそうな顔でそう言った。




うぅ……。




参ったな……女に泣かれんのがいっちばん嫌いだ。





俺しか頼る人がいないと泣き目で言う夏紀を、俺はほっといておけなかった。




今日は早く終わったから、少し時間に余裕もあるし……。




「悪い、中津。ちょっとだけ待っててくれるか」





俺は車の準備をしようとしている中津にそう伝えて、夏紀の頼みを渋々了解した。