「じゃ、奈央ちんごちそーさま。またね♪」




八時ぴったりにお迎えがきた南さんは、最後にそう笑顔を残して部屋を出ていった。




「……ふぁ〜」




とりあえず、無事に南さんを送り出した事に安堵のため息を吐いて、あたしは散らかった部屋を片づけを始めることにした。



食べ終わったお皿に、ビールの缶。散らばっているクッションに、ズレたカーペット。




コレは、ちょっと汚すぎる……。



とりあえず、テーブルの下に落ちているお酒の缶を拾っていると………。



「あれ……?」



そこには、見たことない青の携帯電話。



日向のとは違うし……もちろん、あたしのでもない。



ということは………。




「あ、それ和也の携帯じゃん」




「だよね……?」




洗面所で顔を洗っていた日向が帰ってくると、あたしから南さんのらしい携帯をとる。




「ったく。アイツばかだな」




「携帯ないと、きっと困ってるよね……」




どうしようかと悩みながらも、日向の手にある南さんの携帯を見つめていると………。




「……しょうがねぇな。俺、追っかけて届けてくるわ」




「え……車で?」



「ん」



正直、中津さんには勝手に出歩くなって言われてるんだけど……緊急事態だし。



仕方ないよね。




それに車で行くなら、誰かにバレることもないだろうし。




「じゃあ、行ってくるな!すぐ帰って来るから」



「……うん! 分かった」





あたしは何の不審もなく、携帯を届けにいく日向を送り出した。