「誰と……電話してたの?」
あたしにはそう聞くのが精一杯で。
あたしなりに勇気を出して聞いたのに………。
「奈央には、関係ないよ」
そうそっけなく返されてしまった。
「そっ……か」
ほんとは納得なんてしてない。
不安で仕方ない。
「ごめん、奈央。用事できちゃってさ……もう少ししたらちょっと行っていいかな?」
「………え、用事って」
「ほんっと、ごめん!!」
………なにそれ。
電話の相手も知らせてくれなくて、電話がきたらちょっと出かけてくるなんて……。
さすがのあたしでも……不安になるじゃん。
さっきまでは、あんなに近かった日向が、なぜか少し遠くに見えた。
「……もう、いいよ」
「奈央?」
「日向のバカ! どこでも行きなよ……っ!」
気づいたらそう日向に叫んで、あたしは反対方向に走っていた。


