ワケアリ夫婦っ!!

電話の向こうの日向は、どこか疲れているようだった。
「ちゃんとご飯、食べてる?」
『ん〜、ホテルの飯って、なんか味気なくてさ。やっぱ奈央の手料理が一番♪』
「帰ってきたときには、いーっぱいごちそう作って待ってるから。ご飯はちゃんと食べてね」
『まじ!楽しみだなぁ』
「へへっ………そろそろ、切るね?バイバイ」
『おぅ、また電話するな』
最後に日向がそう言うのを聞いて、あたしは静かに電話を切った。
本当は、もっと話していたい。もっと日向の声を聞いていたい。
だけど、きっと日向は撮影で疲れてるだろうし………。
もし、あたしに電話できる時間があるのなら……そのぶんだけでもゆっくり休んでほしい。
そう思うあたしは、日向から電話がきても、なるべく早く切るようにしている。
それでも、いくら仕事で疲れていても電話してくれる日向の優しさに、胸がきゅっとなる。
………大丈夫。
ずっと会えないわけじゃないんだもん。
たった半年………。
日向のためなら、我慢できるよ。
こぼれそうな涙を必死にこらえながら、あたしはまたトボトボと帰り道を歩き出した。