「もともと日向さんはバカな人だと思っていましたが。わざわざいつも毒突く私に励ましの言葉をかけるなんて、あなたも相当なバカのようですね」





「うっ………」






なぜか、いつもの毒舌な中津さんに戻っていて。





確かに、自分でも苦手な中津さんを励ますなんて、全然考えてなかった。






でも、励ますというよりは、ただあたしが素直に思ったことを言っただけだし……。






むしろ、かなり失礼なことしちゃった気が………。






今さらになって、中津さんに説教されてしまうんじゃないかととオロオロし始めてしまう。





だけど、中津さんの口から出たのは。






「良かったです。日向さんが好きになったのがあなたで」





「………え?」





そう言って、眉尻を下げて微笑む中津さん。




思いもしなかった、温かい言葉。





「い、今なんと?」




「……二度は言いません」






「まぁまぁ、そうケチらずに……」





「説教でもされたいのですか?」




「……………」





もう一度聞くと一瞬にしてあの笑顔は消えて、いつもの無表情に戻ってしまう。





それでも、やっぱり聞き間違えじゃなかった。もしかたら………。






「ついつい長居してしまいましたが、そろそろ失礼させていただきます。日向さんは、一応明日一日のお休みをとらせていただきましたが、また連絡させていただきます」






そう言って玄関のほうへと行ってしまった中津さんを、あたしは急いで追いかけた。