なぜかあたしは、わざとそんな意地悪を言った。 するとアキは、腕の中のグリコに視線を落としたまま まるで何かに想いを馳せるように、ふっと微笑んでつぶやいた。 「そんなの、いねーし」 「……」 湿気を帯びた夜風が、あたしたちの間の木を揺らす。 ざわざわ、ざわざわと。 その音が胸の奥まで響いて なぜだろう、あたしは言葉を返せなくなった。