あたしの横を小さな影がヒュンと横切り、宙に向けてジャンプした。 「あっ……」 飛んだのは、うちで飼ってるトラ猫のグリコだった。 グリコは軽い身のこなしで木の枝に着地すると、その勢いを保ったまま、向かいの窓へと飛び移った。 「あ、猫」 意外にもアキが好反応を見せる。 「名前は?」 「え……グリコだけど……」 「すげぇネーミング」 ふ、と微かに笑みを浮かべて、アキはグリコを抱き上げた。 そして、毛並みに沿って優しく手をすべらせ始める。