“アイツ”とアキが呼んだ女の子の顔を、あたしは知らない。 そして今、目の前にいるアキの顔も、完全に知らない人だった。 ……少しはあたしに心を開いてくれた気がしてた。 でも、そんなのうぬぼれだった。 どんなに仲良くなっても アキが一番大切にしたいモノは、きっと“今”にはなくて。 そしてそれは、あたしとはまったく無関係の世界で。 他人が土足で踏み込んでくることを、アキは全身で拒んでいるように見えた。