黙りこむあたしに、彼は「まだ何か?」みたいな視線を送ってくる。 「……お邪魔しました」 そう言って帰ろうとしたけれど、やっぱ最後に嫌味のひとつでも言ってやろうと思った。 あたしはふり返り、精いっぱいの高飛車な態度で言い放った。 「そのタルト、高いんだから味わって食べてくださいね」 すると彼は、柔らかそうな前髪のすき間からあたしを見つめて。 「悪いけど俺、甘いの食えないから」