「泉穂ちゃん」 ボーっと見ていたところに名前を呼ばれ、驚いて振りかえる。 中庭からニーナ先輩が歩いてきた。 「ひとりで何してんの? 学食に用事?」 「いや、用事ってわけじゃ」 なんとなくバツが悪くて否定するあたし。 実際、別に用事はないし、帰ろうとしてたところだし―― 「そういえば橘アキ」 先輩の口からいきなりアキの名前が出て、ドッキーン! と心臓が跳ねあがった。