『あんたが見た男の子の名前。 娘さん夫婦の1人息子の、橘アキ君』 初めて耳にしたその響きが、すとんと胸に落ちた。 たちばな、あき。 開かずの窓から突然現れた男の子。 あたしに、とびきりキレイな虹を見せてくれた――… ――ガチャン、といきなり目の前でドアが開き、あたしはハッと我に返った。 「あ……っ」 ドア板のむこうから現れたのは、橘アキ本人だった。