「帰る……」 先に帰ったら悪口言われるとか、そんなの今はどうでもよかった。 あたしは肩を落として歩きだした。 「泉穂、帰るのぉ?」 モカの声が背後で響く。 「じゃああたしも門限あるし、そろそろ失礼しようかな。 ねぇ、橘さん。一緒に帰りません? あたし、視力が弱いから夜にひとりで歩くとすぐ転んじゃってぇ」 聞きたくもないのに、耳にねっとりと流れこんでくる甘い声。 “可愛いけどドジっ子なあたし”アピールで、男とふたりきりになるんだよね、あんたは……。