*あげはsaide*



目の前に居る人物…。



大嫌いで大嫌いで、
見るだけであの時の記憶がよみがえる。



身体中が震える。



そして今すぐ殴り飛ばしたい。





いろんな感情が頭をよぎる。


少し痩せた姿で、静かに座っている。




私はソイツをおもっきり睨む。



「あげは…仁君…来てくれたのか…」



「名前…なんか呼ぶな。
テメエなんか許すつもりサラサラないから…」



「あげは落ちつけっ。
大丈夫だから。な?」


興奮した私の手をギュッと握りしめ、落ち着かせてくれる。




「あの、今日は報告に来ました。」



「報告…?」



「あげはが卒業したら、
俺達結婚しますから。
娘さん幸せにしますから!」



仁は真っ直ぐ胸張って言った。

ソイツは少し俯き加減になったあと、笑顔になった。


「そうかぃ…。あげはが結婚か。幸せに…娘を頼みます。」



なんとなく、肩が震えていて顔には光るものが見えた。






何で…?
私が嫌いなはずなのに…




なんだかよくわからない。




だけど…
なぜだか心がほっとしてる。




何処かにあったおもりが
ごっそり何処かにいったみたいだ。





「元気でね。…お父さん。」




許したわけじゃないよ。
ただ言いたくなっただけ。




そして、幸せな気分に浸りながら家へと向かった。