夜風が寒くなってきたのだろう。 彼女は腕を少し擦った。 「これ着とけ」 俺はスーツを脱ぎ、彼女の肩にかけた。 彼女はちょっと驚いた顔で、俺を見つめる。 「先生って…」 「ん?」 「ううん、なんでもない」 また微笑んで、ありがとう、と言って肩にかかったスーツを手で支える彼女。 「私、4月からアメリカに行くの」 唐突に彼女は、俺がくゆらす煙を見つめながらそう言った。