「私、親友がいたの」

親友。
何とも甘ったるく居心地の悪い言葉だ。

「小さい頃から仲が良くて、小学校から高校までずっと一緒だった。これからも一緒だと思ってた」

俺は黙って頷く。
きっと今の彼女を救う言葉なんて、どこにも用意されていない。

結末は嫌でも読めた。

「けどあの子は体が弱くて病気がちで…、数ヶ月前から入院してたの。私、毎日お見舞いにいったけど、あの子は見るたびに痩せていって、元気がなくて」

そこで彼女の言葉が途切れる。
思い出したくないことを無理やり思い出そうと、首を左右に大きく振った。

しゃくり上げながら出てきた言葉は、どこまでも無力で頼りなかった。

「3日前にお見舞いに言った時、あの子は、あとちょっとしか生きられないって言われたって…!
もう余命は長くないって、そう言った」


彼女の言葉から、涙から、吐息から、すべてから哀しみが滲み出る。

「殺してって、言われた」

そこで俺は息を呑んだ。

「あんたの手を汚すことになるのは申し訳ないけど、もう殺してくれって…。
こんな状態で生きていても、うれしくないって…」

そう、言ったの。

その後の彼女の行動は、口にしなくてもわかった。
彼女は、自分の親友を殺すためにこの道を歩もうと決めたのだ。